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サイト『果てない大地 遠い空』の別館です。 異文化SchoolDays企画でのチャットに関するレポート、なり茶告知の場所です。
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終わった!!!!!!
良かった!!!嬉しい!!!
大分前に書いた『翠緑の瞳』の続きです。
サディ&ナスのようなサディ×ナスのような。
そして例によってグダグダ、捏造しまくりです。
長くなったので二つに分けます。

*****


荒れた荒原。
岩石にしがみつくようにして生える疎らな低木と枯れたような草以外に、自然の営みは見られない。
それをも吹き飛ばそうとするかのように、荒原一帯に強い風が吹いている。
年中強風に見舞われるこの地域は、“風の大地”と呼ばれているらしい。
 
 
『翠緑の瞳2』
 
 
荒原の外れ、街との境目の辺りにスラム街が広がっている。
この世界では人種差別が国によって正当化されており、追いやられたカルカッタ族という民族がこのスラム街を形成しているのだという。
彼らはこの国の人間アングリテン人を嫌い、軍人に異常な警戒心を持っている。
自分が銀髪で都合が良かったと思う。
遥か北には銀髪の人々が住んでいるというから、その混血であるせいで定住出来ず旅をしているという事にでもしよう。
差別を受ける者は、得てして同じ立場の者には同情的になるものだ。
バサリ、と普段の軍服から旅人風のローブに衣更えすると、私はそのスラム街へと向かった。
 
 
この世界に、本来いる筈ではない存在が紛れ込んでいるという情報が入った。
自在にその姿を操り、意思疎通の可能な高い知能を持つ魔物だ。
その魔物を探し出し始末する事が、今回の私の仕事だった。
街の中にはいはしないだろう。
街というものは、余所から紛れ込んだ者が暮らすには何かと不都合な場所だ。
魔力の探知ではこの辺りに反応が密集している。
あちこちから集まった者が不法占拠をしているスラムに、魔物もまた潜んでいる可能性が高かった。
 
 
足を踏み入れた私に向けられる、畏怖と敵意と懐疑の目。
銀髪を隠す為にフードを被っているから、カルカッタ族特有の褐色肌を持たない私はアングリテン人と見なされているのだろう。
突如、背後から私に向かって棒が振り上げられた。
それを振り向きざまに片手で受け止め、クルリと捻って取り上げる。
「う、わっ」
小さく悲鳴を上げて転んだのは、まだ年端もいかない少年だった。
側にいた女性が慌てて駆け寄る。
「馬鹿イズー!すみません、この子にはよく言い聞かせておきますのでどうか…!」
恐怖に顔を引き攣らせながらも、少年を庇うように抱きしめる。
私は苦笑してフードを取り払った。
「何か誤解をされているようですね。私はデーテル人ですよ、あなた方に危害を加えるつもりはない」
「デーテ、ル…?」
呆気に取られたように見合わせる女性と少年。
私達の様子を見ていた男性が横から口を挟んだ。
「デーテル人ってアレか、北の奴か?何で冷戦中のこの国にいんだよ?」
「正確にはアングリテン人とデーテル人の混血、ですね。私は、この国の人種差別の実態を調べる為に旅して回っているのですよ」
私の言葉に、男性もまた呆気に取られたような顔をする。
デーテル人の血が容姿に強く出た私はこの国で差別を受け続けてきた事、そのお陰で人種差別に対する意識が強い事、だからこのスラムの人々に敵意や偏見などない事を、私はかい摘まんで説明した。
勿論、全て作り話である。
事前の情報収集からこういう設定を考えておいただけだ。
「最近このスラムに集まってきた新顔など、教えていただけると嬉しいのですが…」
私の言葉に、数人が顔を見合わせた。
「そりゃあ…新顔つーと、あいつらだよなぁ」
「いつ来たんだっけ?一昨日?」
「カルカッタ族じゃない奴らだけどいいのかい?」
一人が聞いてきた質問に頷くと、先程襲いかかってきた、イズーと呼ばれた少年がグイと私の腕を引いた。
「おっちゃん、俺が連れてってやるよ。さっきのお詫びだ」
根は人懐こい少年なのだろう、私を案内しながら矢継ぎ早に口を開く。
「そいつらはアングリテン人も混ざってるんだけど、いい奴らなんだぜ。一人がカルカッタ族の混血で、一人はまた違う人種らしいけどよ、そんな事関係なしに一緒に旅してきたらしいんだ」
魔物ごときが人間のふりをするのに随分凝った事をするものだな、と考える。
それともその者達はただの旅人なのだろうか。
まあ、会えば分かる事だ。
魔物を探し出す為には、地道に当たっていかねばならない。
そんな事を考えていると、パッとイズーが立ち止まって笑顔になった。
「ナスク!なあなあ、このおっちゃんが話聞きたいんだってさ!」
その声にこちらを見たのは淡い金髪の少女だった。
「イズー。誰?その人」
きょとんとしながらも、手にしていたバケツを置いてこちらへやってくる。
先程私が話したのと同じ内容をイズーが話すのを聞いて、少女が私に笑いかけた。
「えーと、あたしの話が役に立つのかな?今カルカッタ族の混血である仲間はいないし、あたしで良ければ話しますけど…」
聞くと、仲間は街で金を稼ぎに行っているらしい。
その間ナスクというその少女は、スラム内の怪我人や病人の手当てをしたり、子供達の遊び相手をしているそうだ。
―――外れだと、悟った。
魔物は金稼ぎなどしないし、手当などという高等な知識も持ち合わせてはいない筈だ。
だが、そう簡単に納得出来ない気持ちが私の中にあった。
この少女をどこかで見た事があるような、何かが気になるような。
心のどこかで、そんなよく分からない曖昧な引っかかりがあるのだ。
試しに探知にかけてみようと、魔力をそっとナスクさんの方へ伸ばす。
その瞬間はじけ飛ぶように動いて、私と距離を置いた。
「…あれ?」
不思議そうな顔をしてキョロキョロと見回す彼女に、ほう、と感心する。
「どうしました?」
「あ、いえ…何でも、ないです」
私の魔力を感じたのだろう、だがその正体はよく分かっていないようだ。
どうやらこの少女は魔物ではない。
だが他の人々とも違う何かが、私に警戒心を解かさせなかった。
警戒はし過ぎて損する事はない。
それが、長年生きて得た教訓だ。
「っと、すみません!あたしそろそろ食事の用意しなきゃ!」
思い出したようにナスクさんが言った。
言われてみればいつの間にか太陽が傾き、夕暮れ時が迫っているようだった。
「ええ、それでは私はこの辺りを少し見てきますね」
「うん、またいつでも、時間ある時に話そー!」
手を振って駆けていくナスクさんに手を振り返して、私はスラムの中心へ向かった。
ザッと見たところ疑わしい者はいない。
念の為に張り巡らせている魔力探知に引っかかる者もいない。
だがこのスラムはかなりの範囲に及んでいるから、当然まだ見ていない所はたくさんある。
やはり地道に探すしかないか、と私は溜め息をついた。
 
 
グルリと回っていつの間にか私は元いた場所に戻ってきていたようだ。
先ほど通った見覚えのある場所に出る。
ふと、私は顔を上げた。
向こうの方でナスクさんが何やら運んでいるようだ。
彼女は、何かを口ずさんでいるようだった。

―――♪夕焼け空の彼方で 流れる雲が染まってく

近付くにつれ、少女の歌声が流れるのが耳に入る。
聴いた事がない筈の、この世界の童謡。
だがどこかで確かに聴いた事があるような、そんな引っかかりを覚えた。

―――♪一番星が歌いだす 遙かな惑星(ホシ)の子守唄

聴いた事はあるが、いい感じではない。
この歌はどこで聴いたのだったか。
思い出したいような、思い出したくないような…
「―――ナスク、さん」
思わず声をかけてしまった。
その声に歌をやめて振り向いた彼女が見せたのは、鮮やかな翠緑の瞳。
その瞳に射抜かれて、私は麻痺したように立ち尽くした。
―――私はこの目を見た事がある。
何年か前に…そうだ、あれは歴史の軌道修正をする為に人を殺した時だった。
確か、私はその運命に従い、目の前の少女と同じ瞳を持つ幼い子供の親を殺したのだ。
珍しい事例だったから記憶に残っている。
「…サディスさん?どしたの?」
不思議そうな顔をして首を傾げるナスクさんが、あの時の子供と重なった。
「…いえ、いい歌ですね。それは?」
「あー、えっと…何の歌だろ?昔、あたしを育ててくれた人と一緒によく歌ってたんだ」
この歌、大好きなんだよ、と笑う。
二度と会う事などないと思っていた、怯えた目をした少女が、時を経て再び自分の目の前で笑っている。
その事に私は不思議な感情を覚えた。

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